山崎
知り合ってどんどん仲良くなるうちにわかってきたことなんだけど、
マリエちゃんは、ほんとに真面目で、繊細で几帳面でしっかりもの。
心の中の存在感としてはね、もう、おねえちゃん。
マリエ
爆笑
山崎
10才くらい私が上だけど。
とにかくしっかりしてるよね。
マリエ
そうですかねぇ。
自分がしっかりしてないことで誰かに迷惑がかかると、
自分を許せなくなっちゃうんですよね。
裏を返せば余白を許せないっていうか
あんまり良くないなぁってのはあるんですけど。
山崎
でも他人に対しては寛大だよね。
だって私に対して、しっかりしなさいって怒ることないじゃない。
マリエ
怒るのもあんまりないなぁ、、怒った後、自分がへこんじゃうんです。
何で怒ってしまったんだろう、なんで我慢できなかったんだろうって。
だから、そういう誰かに怒れなかった気持ちを歌にしてきたと思う。
やり方が陰湿!(笑)。
山崎
そうやって、あのような激しい数々の歌が産まれたのね。
だからあれだよね、たまたまマリエちゃんも出てる日に、別の誰かを観に来て、
マリエちゃんとは話さずに帰っちゃったお客さんとかは、この人どんだけだろうって思ってると思う。
怖くて話しかけられないって。
マリエ
半径2メートル以内には近づかない方がいいよって感覚を与えてたと思うし、それでいいと思ってました。
山崎
そこが私はね、気持ち良かった。
マリエ
みやこさんもパンクスな人間だから(笑)。
山崎
マリエちゃんがまだ活動していた時は、自分も出演する企画っていうのをけっこうやってくれてたんだけど、
なんせやりやすい。
やりとり早いし、基本的に完璧に仕上げてから送ってくれるし、
ちょっと質問しても返ってくるのがめちゃくちゃ早い。
ミュージシャンなんだけど、ミュージシャンじゃない才能もかなりあるよ。
多分、この人材欲しいっていろんなとこの社長が思ってると思う。
マリエ
ミュージシャンであることよりも、ミュージシャンをバックアップする職業の方が
自分には向いているし好きだなって思ってました。
山崎
やってるときから?
マリエ
そうです、やっているときから。
実際にそういう仕事の引き抜きの話もあったんです。
うちの社にきて、このアーティストを担当しないかっていう。
自分に向いてるし好きだっていうのは分かってたけど、
そのとき一番好きなのは自分がステージで歌うことだったから、
まずは一番楽しいことを取ったんですよね。給料とか安定より。
だからあんまり頭良くないですね(笑)。
山崎
いやいやいや、珍しいタイプだと思う。
ステージに立つ人として、あれだけ魅力的で、
さらに裏側としてもあんなに仕事が出来るとなると、これはどういうことなんだろうって思うよね。
マリエ
んー、みやこさんは私に超甘いからなぁ。
山崎
わたし、自分よりいろんなことが出来る人には甘い。
マリエ
これ、お店的には言っちゃいけないかもしれないけど、
イベントのときは音止めの時間があるわけですよ。
何時までに演奏は終えましょうねっていう。
で、自分のイベントのとき、絶対に音止めの時間過ぎてるって思ってるのにアンコールがあると、
「マリエちゃんなんだからやっちゃいなよ。音止めなんか関係ないよ!」
ってみやこさんに送り出されることが多々ありました(笑)。
山崎
そうそう。自分が一番興奮してるっていう(笑)。
マリエちゃんの日は気持ちがお客さんだから、客席からアンコールがあったから、とかじゃなくて
私の中でアンコールは決まってるの。そりゃ、音止めとか関係ないよね。
マリエ
でも、みやこさんには買いかぶられてるなぁって思うことがたくさんありますよ。
山崎
やー、マリエちゃんはね、やっぱりすごいんだよ。
たとえば、自己評価とかもすごくフラットなの。
どっちかっていうと人間って、色んな言い訳をして、こうだったからしょうがないか、とか
流れていきがちなんだけど、そこを許さないよね。
マリエ
融通がきかないんで(笑)。
山崎
すごいことだよ、出来そうで、出来ないよ。
マリエ
それは、ミュージシャンとしての才能がない、という自覚があることにプライドを持っていたからかも。
私はそこにものすごいプライドを持ってたんですよ。
好きだからやってるけど、自分がミュージシャンとして大きな成功をおさめるとか
名が売れるとかは、一生ありえないって自覚があったんです。
山崎
ワンマンライヴとかであれだけ人を集めることができても?
マリエ
そこにいる人には本当に感謝しましたし、今も最大限に感謝してますけどね。
それ以上どうこうとか、次は何千人、とか
武道館だとかドームツアーだとかには一切目が行かなかったし、
自分の持っている力で最大限できることを楽しくやろうってところだけに力を入れていて。
山崎
すばらしい!とっても重要な事だよね。
わたしなんか肝に銘じないと、あっちゃこっちゃ、気持ちがいっちゃうから。
マリエ
今もイベントをやってるけど、ライヴを観に行かないような友達からは
次はもっと大きな会場で出来るといいね、とか
もっと有名な人を呼べるようになるといいね、とか声がかかるけど、
なんで?って。やっぱそっちにいくんだなぁって思っちゃう。
流れとしては正しいし、本来そうあるべきだと思うけど
1000人の会場で、1回ヒーヒー言いながらやるんだったら
100人の会場で、超楽しい!って思いながら、余裕を持って10回やりたい、みたいな。
山崎
うんうん、それほんと重要だよね。
マリエ
ミュージシャンなら、ハングリーにしてなきゃいけない部分だとは思うんですけど。
山崎
でも、割ととんでもない発想をする人もいるなって思う。
ほんとに夢のような、、何段階もステップ踏んだ後のここらへんのことを語る人もいる
んだなって思うことはある。
逆に現実的な事を言ってしまうと、それはつまらない考えだ、と言われたりすることもあります。
マリエ
うん、確かに。
冷めてるねーとか言われることもあるけど
いやいやいやいや!尋常じゃない情熱でやってますよ!って言いたい(笑)。
人間の欲というか、今あるものを倍にしたいとか
裕福になりたいとか、あんまりそこに執着がないのかもなぁ。
たとえば、毎月のお小遣いがこれです、とか言われたら、
その中でどれだけ楽しくできるかな?って考えるほうが好きなんでしょうね。
突然それが倍になったことを考えてもねぇ、、、っていう。
山崎
うん、それはとても共感できます。
いまある現状での幸せってとっても重要よね。
マリエ
ただ、いまある現状の最大限を維持していくと、底辺がちょこちょこ上がってくると思うんですよ。底上げされるというか。
山崎
うんうん。
マリエ
誰かに言われるような1000人とか1万人の世界なんかは、その底上げした先にあるんだろうなって頭の片隅には置いてるけど、
最初から何段飛ばしでそこにいきたいっていうんじゃなく、結果としてそこに辿り着いたら超ラッキーな人生だよなぁって。
あと、今ある最大限を維持し続けると、傍から見てたいして変わってなくても、
だんだん底上げされてることに自分で気付く瞬間がくるだろうし。
そこに気付けたら、それこそ幸せなんじゃないかなと。
山崎
そうだよね、意外と気付いたら変わってるんだよね。
変わろうとかじゃなくて。あっ、ていう瞬間があるよね。
それにしても、ピチピチの20代前半でその冷静なスタンスでいたというのは
やはり賢い人なんだろうなぁ。
マリエ
賢いのか馬鹿なのか。一周まわって馬鹿だなって感じもしますけど(笑)。
もっと、なりふり構わずに夢を語っても良かったのかもしれないし。
山崎
でもきっとマリエちゃんくらいだと、スカウトとかあったでしょ。
マリエ
全くなかったですね!
10代の頃はバンドの時にありましたけど。
バンドを組んでて、ボーカルだったんだけど、その時はけっこうありました。
山崎
ボーカリストとして?
マリエ
バンドとしてです。
でも、ソロになってからはこれといって特になかった。
山崎
意外だなぁ。
やっぱあれかな、もっとわかりやすくハッピーなものが求められていたのかしら。
マリエ
でしょうし、たぶん私の歌詞は難しかったと思うんで。
誰が聴いてもそうだよね、となれないだろうし、共感できるできないは別としても
理解に至らない人が多いであろう歌詞を書いてたし。
まぁ、解る人にだけ解ればいいやって思ってたんですけど。
山崎
そうだよね、だから刺さる人には強烈に刺さるっていう。
マリエ
でも、そのニーズが世の中に多くなかったから、大きなところからは欲されなかったんでしょうね。
山崎
まぁ、世の中で売れてる歌はね、もっとほわっとした
夢とか希望とか、解りやすいものが多いものね。
マリエ
色恋とかね。
あー、でも一回だけ、この人と仕事したいって人はいました。
オーディションがあって、けっこうな人数が受けて、
最後の4人とかまで残ったんですけど、結局、合格者なしでした。
それに受かってたらその人と仕事してたかもしれないなぁ。
その人と仕事したからと言って、どうにかなったという保証はないけど。
山崎
マリエちゃんの生き方自体が、全然、夢物語的じゃないよね。
マリエちゃん、突然、音楽辞めたじゃない?
その時に多分、また歌わないのっていう質問とか、メールなり手紙なりけっこうあったと思うの。
あれだけ歌ってたから。
でも私的にはマリエちゃんの考え方とか生き方だったら、もうないだろうなって思った。
マリエ
ないでしょうね。
山崎
だから、その今やってることが永遠に続くわけじゃなくて、
現状って常に変わっていくものだから、その中で出来ることをやっていくというのが
マリエちゃんなんだろうなっていう印象はものすごく強くて。
マリエ
未だにありますよ、歌わないの?って。
もう辞めてから2年以上経つんですけど。
山崎
歌って欲しいって?
マリエ
歌えよ、とか。もうそろそろ休み疲れただろ、とか。色々ありますね、ありがたいことに。
今は、もう歌いたくない、、とは違うけど、
人様の前で歌を歌うだなんて!っていう気持ちになってる。
山崎
わはは。
マリエちゃんが辞めるって発表した後、わりとすぐ結婚したよね。
あれも衝撃だったね。
マリエ
音楽を辞めるって決めて、そのしばらくあとから旦那になる人と付き合い始めてるので、
全然関係ないところから結婚が飛び込んできて。
山崎
なんかおっきいものを手放したら
違うおっきいものがやってきたみたいな感じなんだろうなって。
すごいびっくりした。
マリエ
私もびっくりしました。
自分は結婚しないだろうし、もしするとしても晩婚だろうなって思ってたので。
27で結婚して、女の子としてはちょっと遅いかもしれないけど
ザ・適齢期みたいな時期にあんなにパーンと嫁にいくなんて。
山崎
ほんとほんと!
マリエ
相手とのタイミングも合ってたんで、自分だけが急いでるとかでもなく、
すごい猛スピードでスパンッと結婚したので、あそこで人生変わった感はありましたよね。
山崎
まぁそうだよね。
ほんとにマリエちゃん、結婚したらもう完全に主婦として過ごしてるもんね。
やっぱり、その場で最大限の能力を発揮するんだよねぇ。
それがすごいよね。家庭的でミュージシャンの雰囲気すら無くなってしまったよね。
マリエ
ぜんぜん無いですね。主婦の割には表に出てますけど(笑)。
たまーに、ほんとに年に1回あるかないかなんですが、
友達のミュージシャンと一緒に作ったCDとかに
サインくださいって持ってきてくださるお客さんがいたりして、
一般人ですけど大丈夫ですか?って確認しちゃう。
山崎
単純にミュージシャンって言ってもマリエちゃんの場合は
本数がすごかったよね。結局何本やったの?
マリエ
一番多くて、年間150本以上かな。
2、3日に1回歌ってたのが、3〜4年は続いてたはず。
山崎
だよね。だから、ミュージシャンとしてのマリエちゃんをずっと
追いかけてきた人はあまりにも突然、無くなってしまった、、というか
信じられないし、本人の中ではマリエちゃんは今でもミュージシャンなんだろうね。
マリエ
ありがたいし、嬉しいけど。
山崎
音楽辞めて、喪失感もあまりなかった?
やりきった感の方が大きいのかな?
マリエ
すっきりさっぱりした方が大きかったですね。
突然の発表ではあったんですけど、自分の中では全く突然でなかったので。
多分、最後の2年位は続けるか、辞めるか、迷いながら、
でも何とか続けていこうって思いながらやってたので。
辞める決断をしてから「マリエは終わりますよ」っていうのを、
応援してきてくれた方とかお世話になった方と共有できたのはすっきりしましたね。
山崎
2年位、もやもやしてた、一番大きい原因はなんだったの?
マリエ
一番は、曲が書けなかったんです。歌詞は書けるけど。
いまでも歌詞だけなら書けると思います。
ただただ曲が書けなかった。
でも、ミュージシャンとしての資質がないと自覚していたから、納得の結果というか。
私は理論を全部すっとばしてきたので、譜面は読めないし、
自分の弾いているコードがよく分からない、ってこともたくさんあったので、
そういう音楽に対して素人頭で書ける曲を書ききったから何にも出なくなったんだと思います。
山崎
逆に理論で入ってる人は曲はかけるけど、
マリエ
歌詞がかけないっていう話はよく聞きますよね?
まぁ、どっちを通ってなくても、どんどん曲を生み出せる人もいるし、
そこはもう人それぞれだと思うのですが、私の場合はそうだったので、潮時かなっていうのはずっとあって。
山崎
じゃぁ、まさにやりきりましたっていう感じなんだね。
マリエ
はい、もう出てきません!終了!っていう。
山崎
非常に潔くて素敵だね。
マリエ
ずっと今ある曲を歌い続けるとか、誰かの曲を歌うって方法もあったし、
それをやってる人も実際にいるけど、
私が理想とするミュージシャンは、そうじゃなかったから。
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