シモシュ
あのさ、びっくりするくらいピアノの話とかしてないね。
山崎
ほんとだ。
真面目に、ピアノの話をすると、私はシモさんに出会って初めて本当のピアノの音を知ったと思っています。こんなにふくよかなんだ、こんなに幅があるんだって、とても感激して。
これは本当にシモさんのおかげです。
以前、PAでいた沢田さんとは営業のことについては、意見が合わないことも多かったけど、音楽の話はすごくたくさんしていて。
二人の中でピアノの音はシモシュさんって一致してたんです。
シモシュ
あっそうなんだ。へぇ。
山崎
性格は全然合わないけど、音楽的な耳はお互い信頼があったので。
シモシュ
わはは。それは嬉しいです。
山崎
だから、ピアノちょっと大丈夫かなって思うと、シモさんに弾いてもらいたい、意見聞きたいっていうのは、沢田さんともよく話してました。
沢田さんは音楽に関しては、とても厳しい意見を持ってる人だったので、やっぱそうだよね、沢田さんでもそう思うよねっていうのはあって。
シモシュ
逆に身を引き締めないと。
山崎
でも観てて、ちょっと悔しい。ピアノとすごい戯れてるから。
ずるいって思っちゃう。どうみても戯れてるんだもん。
さっき、最初はそれほどピアノが上手くなかったって言ってましたけど、もう嫌だっていうのはなかったんですか。
シモシュ
レッスンが嫌だってういうのはあったけど、ピアノとか音楽が嫌だっていうのは思ったことない。音楽は結局ずっと続けてたね。
山崎
特に影響をうけた作曲家っているんですか。
シモシュ
えっとね、中学校の時にかっこいいと思ったのがYMO。
山崎
まさにリアルタイムだ!
シモシュ
そうそう。それ以外にはクラシックのショパンとか。
それで、高校になって軽音でロックを知ってしまって。
その当時、ジョージ・ウィンストンっていう人が流行ったの。知ってる?
山崎
どんな曲?
(シモシュ、スタインウェイに座り、曲を弾く。)
山崎
わぁ、なんて贅沢な。あぁ、知ってる、知ってます。
シモシュ
この人がね、流行ったのよ。ちょうど環境音楽が流行った時代で。
この人をコピーしたりしつつ、ウィンダム・ヒルレコードの人を聴いたりしつつ。
山崎
基本的にピアノメインの方を聴き続けたんですか。
シモシュ
ところが、そのウィンダム・ヒルにマイケル・ヘッジスって言う阿呆なギタリストがいて。その人のレコードをジャケ買いしたの。高校二年の時かな。それがぶっとんで!
その時から、マイケル・ヘッジスばかり聴いてたなぁ。
気が付けば、マイケル・ヘッジスって人が、今、アコースティックギターで前衛的な弾き語りしてる、押尾コータローとかを輩出してる人なんだよ。
押尾コータローなんかは、マイケル・ヘッジスを完コピできるんだよ。
そういうテクニックを使って演奏してるの。
山崎
へぇ、そうなんだ。
でも、軽音の人たちはそんなの聴かないですよね、きっと。
シモシュ
聴かない、聴かない。俺だけ。
もうそれこそ、ヴァン・ヘイレンとか、アイアン・メイデンとかポピュラーなもの。
山崎
じゃぁ、シモさんは、自分の好きなアヴァンギャルドなものは心に秘めて、一人で楽しんでたんだ。
シモシュ
そうだね。
山崎
で、軽音に顔出すとヴァン・ヘイレン。
シモシュ
そうそう(笑)。それはそれでかっこいいと思ってやってたんだけど。
でも、どっか、自分の中で違和感はあって。
で、音楽をちゃんと勉強したいなって思うようになるの。
本当に遅いんだけど、高校三年生の時に音大に行くって決めたの。
で、面白いのが、それまで友達がほとんどいなかったわけですよ。
それで高校三年生の時に、僕が行く予定の大学の夏期講習会というのがあって。
一週間なんだけど、参加しようって決めたの。
その夏期講習会で俺の人生が変わった!
その一週間で!もうびっくりした。
山崎
へぇぇぇ!初めて話ができる、みたいな?
シモシュ
そう、ザッツライト!
で、思ったの。あぁ、いままで話が出来るやつがいなかったんだ!って。
だからそれから無視されるのも全然平気になっちゃったの。もうどうでもいいやって。
学校の授業も総無視でずっと音楽の勉強してたの。
山崎
きゃははは。新しい扉だ!
シモシュ
とにかく音楽の勉強したくて。理論から何から。
楽しくてしょうがなくて。
夏期講習で会った仲間に、初めて友達って感覚を受けて、俺の中で最高の友達になっちゃったの
それで、入学して、講習会では知り合ってない人とか、違う学科の人とか、たくさんの方と知り合いになるわけじゃない。楽しかったねぇ。
山崎
シモさん、何学科だったんですか?
シモシュ
それが俺、作曲科で受けたんだけど、第二志望でピアノ科も受けてたの。
そしたらピアノ科の点数が高くて、ピアノ科で合格しちゃうの。
全然ピアノうまく弾けないって自覚あったし、作曲やりたかったから、すごいショックで。
坂本龍一とかにも憧れてたし。だから渋々行ったの。
山崎
渋々なんだ。今じゃ信じられないですね。
シモシュ
で、入学式を終えてオリエンテーションの合宿があるんだけど、一晩目の夜に寝てたら、ある先生が俺のことを呼びだしたの。
仲間が「お前何やったんだよ。」とか言って。
で、薄暗いロビーに連れて行かれて。「君か、座れ。君はピアノ科なんだけど、ある先生が君が面白いから、作曲のレッスンを受けてくれということだ。そういわけで、俺が作曲のレッスンするから。」って言われて。で、なんだかわかんないけど、作曲の個人レッスン受けることができたの。
山崎
わぉ、音大の先生が、こいつ面白いって思うってよっぽどですよね。
シモシュ
で、なぜか、ピアノ科の方もその学校で一番偉い教授に就くことになっちゃったの。
山崎
ドラマチック!
シモシュ
だから、それが今の僕を作ってる、ぶっちゃけ。
山崎
その就いた先生方がキーパーソンなんですね。
シモシュ
一番最初の作曲レッスンが衝撃的で。
曲作ってこいって言われて、先生の研究室に持って行って楽譜を見せるんだけどね。
何にも無いところなの。楽器もないし、机だけ。
それで、楽譜を見せたら「君、これ弾いて作ったでしょ。」って言われて。
「はい。」って言ったら、「弾いて作ると音が甘いから、次回から弾いて作るな。自分の中で鳴ってる音だけを書け。」って言われたの。
山崎
面白い!漫画になりそうなくらい面白い!
シモシュ
僕の人生であの二人がいなければ、今の僕は100パーセントいないです。
あの作曲の先生は、僕の今の音楽の基礎を作ってくれた人だよね。
あの人がいなかったら僕の作品は絶対生まれてない。
山崎
まさに運命の出会いだったんですね。
シモさんに聞きたいことがあって。今回、色んな方と対談している中で、音楽をすることだけで生計立てている方ってシモシュさんだけなんです。
暮らしがどっぷり音楽だと思うんですけど、音楽から自分を切り離す時間ってあるんですか?
スイッチみたいなものとか。
シモシュ
なるほど〜。基本的には切り離すことは無理なんだけど、家には仕事を持って帰らないって決めてる。唯一そこくらい。その方が環境的にも良いことが多いから。 でも、かといって、切り離すことは出来ないよね。
テレビ観てたら気になるし。
山崎
テレビから流れてくる音楽が辛いなって思うこともある?
シモシュ
もちろん、あります。楽しいこともあるし、不快になることもある。
例えば、ニュース番組で効果的な音楽を入れたりしているのを観ると、なぜそういうことするのかなって思っちゃう。あえて恐怖を煽るような音の使い方とか。
エンターテインメントにする必要ないのにって思っちゃう。
ひとつ、面白いバロメーターがあって。映画を観た時に全く音楽が入ってこなかった場合、俺の中では良い映画なの。ストーリーしか入ってこない映画。やっぱりどうしても音楽が入ってきちゃうから。
山崎
音楽だけが耳に入ってきちゃうことがないってことですよね。
シモシュ
そうそう。音楽だけが立っちゃってもいけないと思うし、ストーリーの一部になってるのが音楽の作り方としても正解だと思う。
山崎
ところで、シモさんって音楽を聴いていて、歌詞がきちんと聴こえたりしますか?
今回、対談している中で、言葉が音としてしか聴こえてこないって方が何人かいたんです。
シモさんはどうですか?
シモシュ
同じです(笑)。だからね、言葉が聴こえてくる人は本当にすごいなと思う。僕の中では何人かしかいない。
山崎
シモさんにはどのように聴こえているんですか?
シモシュ
えっとね、僕は特殊なんだけど、言葉があると、メロディの音程みたいなものもあんまりわかんなくて。楽器はドレミで聴こえてくるけど、人の言葉のメロディはドレミで聴こえないの。歌は歌なんだけど、ストーリーとして聴こえてくることはほとんどない。
山崎
じゃぁ、一曲歌い終わった時に、何を歌ってたかわからないってことですか?
シモシュ
うん、まったくわからない(笑)。
山崎
へぇ、そうなんだ。
シモシュ
あと、こんなこと言ったら怒られちゃうけど、「この曲はこんな歌です。」とか「こういう時に作りました。」って言われると、わかった、じゃぁ、もう歌わなくていいんじゃない、って思っちゃう(笑)。
山崎
(笑)。でもけっこういらっしゃいますよ。
シモシュ
だよね。せめて、歌った後に、実はこの曲は、、、っていうならわかるけど、演奏する前に言われたら、そのイメージで聴いちゃうじゃない。
僕の場合、音楽を聴く人の自由は奪いたくないから、あんまり説明したくないかな。
これは〇○な曲だから、想像して聴いてくださいって言った時点で、指定していることだから、つまらないなって思っちゃう。
山崎
言われた瞬間にその気持ちになりますものね。
シモシュ
あのね、脳みそって全肯定なんだって。
「自分の部屋にいるって想像しないでください。」って言った瞬間に、今、想像してない?
山崎
部屋にいる想像した。
シモシュ
でしょ?「自分の部屋にネズミが入って来ません。」
山崎
「もう、入って来ちゃった。」
シモシュ
廊下を走るなっていうと、廊下を走ることを想像しちゃうから、「廊下は歩きましょう。」っていうのが良いんだって。
山崎
なるほど!
シモシュ
だってさ、聴く人の自由じゃない。説明しちゃったらさ、、。
山崎
聴く人の状況も全然違いますしね。どん底の人もいるし、超ハッピーな人もいますしね。
シモシュ
そうそう。だから、音楽を丁寧に演奏すればいいと思うんだよね。あとは受け取る側の自由だよね。その余白を残しておきたいよね。
山崎
そうかもしれないですね。
シモシュ
あと、20代の頃、悔しい(観客の)感想が"情景が見える"って言われることだったの。
嬉しいのと同じくらい悔しい。
僕自身が音楽を聴いて何かをイメージするってことがあんまりないの。
バッハとか聴いてても、音楽として聴こえてくるから、それ以上でもそれ以下でもない。
若い頃は自意識が強いから、みんなを感動させてやる!とか思ってたけど、今は聴く人の自由っていうのが強いから、今は色んな意見を聞くのは楽しいけどね。
山崎
それは、シモさんがピアノを弾く姿勢にも現れてますね。
とても自然にシモシュさんとピアノがただそこにいる、って感じがします。
ピアノに無理な音を出させることもないし、ロックなものを弾く時は、ピアノを自然とロックな気持ちにさせてますよね。優しい音を出すときは優しい気持ちにさせてるし。 そこがシモさんの本当に素晴らしいところだと思います。
最後に、シモさんにとってピアノって何ですか?
シモシュ
私にとってピアノとは・・・。
「一番苦手な最高の仲間」かな。
1 2 3

シモシュ プロフィール

【幼年期】
5才よりピアノを習い始める。楽譜は苦手な厄介児。

【思春期】
長野県へ移住。いじめに合ったり、登校拒否したり。普通に反抗期。
ピアノ独学へ。ピアノが弾けると言う事でバンドを組まされたり。
ロック、ジャズ、テクノ、Pops、環境音楽など色々なジャンルを知った。

【青春期】
音楽短大で作曲とピアノを習う。

【青年期】
がむしゃらに音楽、舞台を作った、仲間も増えた。
これまでの主な仕事、舞台、映像などの音楽やCD制作のアレンジ、ディレクション、舞台演出など。プライベートスタジオにて様々なアーティストのレコーディング。
また子ども向け参加型コンサートも全国各地にて公演中。
などなど音楽を中心に様々な活動を展開中。

10周年トップへ

ページのトップへ


cl